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金型の種類・材質・作り方など押さえておきたい基礎知識

金型の種類・材質・作り方など押さえておきたい基礎知識

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金型の種類・材質・作り方など押さえておきたい基礎知識

金型は、プラスチック製品の製造などに必須なものです。うまく使っていくことで、生産性を高めることやコストを抑えること、精度の高い製品を生産することなどができます。金型を事業に活用したいと考えている方は多いでしょう。ただし、事業への活用には、専門的な知識が必要です。知識が不足していると、当初の目的を達成できないことなどが考えられます。

 

金型は、プラスチック製品の製造などに必須なものです。うまく使っていくことで、生産性を高めることやコストを抑えること、精度の高い製品を生産することなどができます。金型を事業に活用したいと考えている方は多いでしょう。ただし、事業への活用には、専門的な知識が必要です。知識が不足していると、当初の目的を達成できないことなどが考えられます。

 

この記事では、金型の概要と重要性、種類と材質、作り方などを解説していきます。以下の内容を参考にすれば、金型を活用するうえで必要になる基本的な知識を身につけられるはずです。金型を使って製品や部品を作りたいなどと考えている方は参考にしてください。

 

 

金型とは?

金型は、主に金属を使って作成した型枠です。具体的には、凹凸が組み合わさった上下一体の構造となっています。上下一体となった金型の隙間に材料を射出などし、素材の流動性や塑性(外力で変形させると外力を除いても変形が残る特性)を生かして製品の形を作ります。使用する材料は、樹脂・金属・ゴムなどさまざまです。

 

金型の魅力は、同じ形状の製品を連続して作れることといえるでしょう。つまり、精度の高い製品を手軽かつ安価に量産できる点が魅力です。このような特徴があるため、さまざまな製造の現場で重宝されています。具体的には、自動車の部品、家電製品の部品、アルコール飲料の瓶などが例として挙げられます。製造業はもちろん、私達の生活にも必要不可欠なものです。以上の特徴から、金型は「マザーツール」「製品の生みの親」「ものづくりの母」などといわれることがあります。

 

 ものづくりにおいて金型が重要である理由

金型は製造業にとってとても重要な存在です。なぜ重要といえるのでしょうか。

 

生産スピードが早くなる

具体的な所要時間は製品で異なりますが、金型を使うことで早いものであれば数秒で成型することが可能です。中には、1分間で数百個の製品を生産できるものもあります。手作業と比べると、生産スピードは圧倒的に早いといえるでしょう。生産スピードが向上する理由は、金型が完成すれば材料を流し込んで固めるだけで製品を生産できるからです。製造業の生産性向上に貢献する点は大きな魅力の一つといえます。

 

納期・開発期間を短縮できる

生産スピードが早くなるため、納期を短縮できる可能性が高くなります。仕上げ加工が発生しにくい金型など、工数を削減できるものを利用すれば納期を大きく短縮できることもあります。新製品の開発期間を短縮できる可能性がある点も魅力です。試作段階で簡易金型を使えば、手作業よりも試作品の開発スピードを早められます。このように状況に応じて効果的に使っていくことで、時間を有効活用しやすくなります。

 

均一精度の製品を量産できる

金型を使えば、同じ形状の製品を大量に生産することが可能です。精密機器の部品などのように、ミリ単位のズレも許されない製品を生産することもできます。このような製品の生産を、もし手作業で進めようとすると、非常に高い技術力が必要になります。均一精度の製品を次々と量産できる点も、製造業で金型が使われている理由といえるでしょう。

 

製造コストを抑えられる

以上のほかでは、製造コストを抑えられる点もその魅力としてあげられます。製造コストを抑えられる理由は、生産スピードが早くなり生産性が高まるからです。手作業で製品を生産するよりも人件費を抑えられます。また、均一精度の製品を量産できるため、不良品の発生も抑えられるでしょう。これらの結果、製造コストを抑えられるのです。利益率を高められるため、ものづくりの現場で金型は重宝されています。ただし、中には作るためにまとまったコストがかかるものもあります。このようなケースでは、少量生産だと製造コストは増加します。損益を見定めたうえで活用することが重要です。

 

金型の種類

金型には次の種類などがあります。

 

【金型の種類】

  • プラスチック用金型
  • プレス用金型
  • 鋳造用金型
  • 鍛造用金型
  • ダイカスト用金型
  • ガラス用金型

 

それぞれの特徴を紹介します。

 

プラスチック用金型

プラスチック用金型は、樹脂成形に使われるものです。具体的には、射出成形・圧縮成形・ブロー成形などに使われています。射出成形は加熱して溶かしたプラスチックを金型に押し込み冷やして形を作る方法、圧縮成形は流動性のある熱硬化性樹脂を金型に入れて加熱・加圧することで形を作る方法、ブロー成形は樹脂の内側に空気を送り込み膨らませて形を作る方法です。

 

例えば、射出成形金型は、凸部(コア)と凹部(キャビティー)で構成されます。凸部と凹部を組み合わせたときにできる隙間に、溶けたプラスチックを射出して冷やし固めて製品を生産します。1回の射出で溶けたプラスチックを均等に流し込まなければならないため金型設計は慎重に行わなければなりません。

 

プラスチック用金型は、自動車・家電・日用品など、さまざまな製品を作るために使われています。したがって、その種類もさまざまです。プラスチック用金型は、金型の中で最も多く製造されていると考えられています。

 

プレス用金型

プレス用金型は、プレス機械などにセットして使われるものです。金型の間に非鉄金属などの板金素材をセットして圧着することにより金型の形を作っていきます。プレス用金型には、抜き型・曲げ型・絞り型などの種類があります。それぞれの特徴は次のとおりです。

 

【プレス用金型の種類①】

 

  • 抜き型:材料から不要な部分を取り除く抜き加工に使われる金型
  • 曲げ型:材料をV字・L字など目的とする形に曲げる曲げ加工に使われる金型
  • 絞り型:カップ状や箱状の製品を生産する絞り加工に使われる金型

 

例えば、絞り型は目的の形になったダイ(凹側の金型)、ダイに沈み込むパンチ(凸側の金型)がセットになっています。これらの間に板金素材を挟んで、圧力を加えることで目的の形を作ることができるのです。

 

また、プレス用金型は単発型・順送型・トランスファー型などにも分類できます。それぞれの特徴は次のとおりです。

 

【プレス用金型の種類②】

  • 単発型:抜き加工・曲げ加工・絞り加工など、ひとつの工程だけを行える金型
  • 順送型:抜き加工と曲げ加工などのように、ひとつの金型で2つ以上の工程を行える金型
  • トランスファー型:単発型の金型が複数並んだ金型

 

単発型は安価ですが、連続加工や自動加工はできません。生産性は順送型・トランスファー型よりも劣ります。順送型は生産性が高いため大量生産に向いています。ただし、単発型に比べて製造コストがかかります。トランスファー型は、自動加工を行えます。大量生産に向いていますが、順送型と同じく割高です。

 

鋳造用金型

熱で溶かした金属を鋳型へ流し込んで冷やし固めて目的の形を作る鋳造に使われる金型です。鋳型は金型と砂型に分かれます。その特徴は、完成した製品を取り出す際に壊す必要がないため繰り返し使用できることです。砂型よりも精度の高い製品を製造できる点、熱伝導率が高いため冷却にかかる時間が短い点も見逃せません。鋳造用金型は、重力鋳造用金型・低圧鋳造用金型・ダイカスト用金型に分かれます。それぞれの特徴は次のとおりです。

 

【鋳造用金型の種類】

  • 重力鋳造用金型:上部に溶けた金属を流し込む供給口が設けられた金型
  • 低圧鋳造用金型:溶けた金属を入れた保持炉内に空気圧を作用させて、保持炉にセットした金型内へ溶けた金属を低圧・低速で注入する低圧鋳造法に使われる金型
  • ダイカスト用金型:高圧で押し合わせた金型内に溶けた金属を高圧で注入するダイカスト法に使われる金型

 

重力鋳造用金型は、基本的にシンプルな構造です。製品を簡単に生産できるため、コストダウンに貢献できる可能性があります。低圧鋳造用金型は、高品質・高精度な製品を生産しやすい点が魅力です。一方で、低圧で鋳造するため、薄肉の製品にはあまり向いていません。また、製品の生産に時間がかかります。ダイカスト用金型は、高い生産性が魅力です。ただし、鋳巣(空洞)が生じやすい傾向があります。また、寿命が短い点にも注意が必要です。

 

鍛造用金型

型鍛造に使われる金型です。金型を使って成形する鍛造を型鍛造といいます。鍛造は、金属に圧力を加えて強度を高めるとともに目的の形を作っていくことです。鍛造用金型は、熱間用金型・冷間用金型などに分かれます。熱間用金型は高温に加熱した金属に圧力を加える熱間鍛造で使われる金型、冷間用金型は常温の金属に圧力を加えて成形を行う冷間鍛造で使われる金型です。一般的に、熱間用金型は寿命が短く、冷間用金型は寿命が長いと考えられています。常温の金属を使う冷間用金型は、加工難易度が高く、仕上がりなどに制約が加わることがあります。

 

ガラス用金型

ガラスの加工に使われる金型です。ガラス用金型は、押型と吹型などに分かれます。押型の金型を構成するのは胴型、目金型、矢型です。胴型に溶けたガラスを仕込み、目金型でフタをして、矢形で圧力をかけます。押型の特徴は、精度の高いガラス製品を生産できることです。吹型は溶けたガラスを金型内に仕込み内側に空気を吹き込んで目的の形を作っていきます。吹型には廻し吹き型・吹き込み型があります。ガラス用金型が活躍しているのは、瓶・食器・照明器具の生産現場などです。

 

 

各種金型の作り方

基本的な作り方についてみていきましょう。

 

荒加工と荒取り

金型を設計してから、荒加工と荒取りを行います。荒加工は金属塊に穴をあける・切込みを入れるなどして歪を除去する作業、荒取りは金属塊の不要な部分を除去して加工の負荷を軽減する作業です。

 

マシニング加工など

次に、マシニングセンタ(工作機械)・NCフライス盤・旋盤などで、金属塊の不要な部分を削って完成時の形状に近づけます。あわせて、砥石で金属塊の表面を削る研削作業、放電加工機を使ってエッジ部やネジ部などを加工する放電加工も行います。

 

仕上げ加工

金型の形状が完成したら仕上げ加工を行います。代表的な仕上げ加工といえるのが、セラミック砥石などを使って表面を滑らかにする磨き加工です。通常、磨き加工は手作業で行われます。

 

組立と動作確認

仕上げ加工を終えたら、すべての部品を揃えて金型を組み立てます。難易度は、金型の複雑さで異なります。組み立て後に行われるのが動作確認です。各部位が設計通りに動作することや目的とする製品を生産できることなどが確かめられます。

 

 

金型に使われる材質

金型に使われる材質はさまざまです。例えば、プラスチック用金型を製作する場合、耐久性・腐食性・摩耗性などに加えて、使用する樹脂との相性、製造コストなどを考えて材質を選択しなければなりません。

 

プラスチック用金型などで多く使われる材質が鋼です。鋼には、弾性・靭性・熱伝導性が高く動的強度に優れるなどの特徴があります。したがって、金型に向いている素材と考えられています。鋼の中でも金型に多く使われている材質が合金工具鋼と高速度工具鋼です。それぞれの特徴を紹介します。

 

合金工具鋼

炭素工具鋼に、クロムやタングステンなどの金属元素を添加して焼入性や耐摩耗性などを高めた鋼です。炭素工具鋼は、一定割合の炭素を含有していて金属元素を添加していない鋼を意味します。ちなみに、焼入性が悪いなどの特徴があるため、金型に使われることは多くありません。合金工具鋼は、添加する金属元素を調整することで、靭性や熱間強度を高めるなど、さまざまな特性を追加できます。

 

高速度工具鋼

高炭素鋼に、クロムやタングステンなどの金属元素を添加してさまざまな特徴を追加した鋼です。高炭素鋼は、炭素含有量が0.6~2.14%の鋼を指します。耐摩耗性に優れるなどの特徴があります。ここに、金属元素を添加して耐熱性などを強化した鋼が高速度工具鋼です。もともとは切削工具に使われていた材質ですが、優れた特性から金型にも使われるようになっています。

金型業界でよく使われる用語

金型を使って製品を生産したい場合、金型業者などとの打ち合わせが必要になることが多いでしょう。ここでは、金型業界でよく使われている用語を説明します。

 

パンチとダイ

パンチとダイは、金型を構成する一対の工具です。パンチは、ダイに圧力を加えて加工を行う部品、ダイはパンチの圧力を受ける部品といえます。金型を上下に分解すると、パンチは上の型、ダイは下の型になります。パンチには、抜きパンチ・曲げパンチ・絞りパンチなどさまざまな種類があります。

 

ストリッパプレート

ストリッパプレートは、加工を補助する部品です。具体的には、パンチに張り付くなどした材料を引き剥がす役割と材料をダイに密着させて変形を抑える役割を担います。あまり目立ちませんが、重要な部品といえるでしょう。ストリッパプレートは、カス取り・払いなどと呼ばれることもあります。

 
ダイホルダ

ダイホルダは、金型をプレス機に固定する部品です。これにより、交換しやすくなるほか、金型を正確に動作させられるようになります。製品精度を高めるため、非常に重要な部品です。ダイホルダは、ダイセットと呼ばれることもあります。

 

スプルー

スプルーは、射出成形機のノズルから射出された溶解プラスチックを金型のキャビティ内に導く通路のひとつです。具体的には、射出成形機のノズルとランナーをつなぐ通路を指します。

 

ランナー

ランナーも、射出成形機のノズルから射出された溶解プラスチックを金型のキャビティ内に導く通路のひとつです。具体的には、スプルーとゲートをつなぐ通路を指します。

 

ゲート

ゲートも、射出成形機のノズルから射出された溶解プラスチックを金型のキャビティ内に導く通路のひとつです。具体的には、ランナーと金型のキャビティをつなぐ通路(入り口に相当)を指します。射出成形機のノズルから射出された溶解プラスチックは、スプルー、ランナー、ゲートの順で進み金型のキャビティ内へ送られます。

 

金型の基礎を理解しておきましょう

金型の基本的なポイントを解説しました。金型は「製品の生みの親」などといわれることがあるほど、製造業に欠かせないものです。金型をうまく使っていくことで、生産性を大幅に高めることができます。この記事を参考に、金型を活用してみてはいかがでしょうか。

 

ジェムス・エンヂニアリングでは金型トータルソリューションを提供し、その一環として金型設計支援および製作支援業務を行っております。

 

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