金型製作の一般的な流れと押さえておきたい金型の種類

「金型を製作したいものの、作り方の流れがわからず検討をすすめられない」などでお困りではありませんか。製造業に欠かせない金型ですが、作り方の流れまで把握している方は少ないでしょう。流れを把握していなくても問題はないと思うかもしれませんが、基本的なポイントを押さえておかないと金型業者との間で無駄なやり取りが発生する恐れがあります。したがって、事前に制作の流れを把握しておくことをおすすめします。
この記事では、金型製作の一般的な流れと金型の種類などを解説しています。以下の情報を参考にすれば、どのような準備をしてから金型業者に相談すればよいかがわかるはずです。金型の製作を検討している方は参考にしてください。
目次
ものづくりにおける金型の需要
金型は、プラスチックや金属など、さまざまな素材を製品にするため活用されています。意識することは少ないですが、製造業の要といえる存在です。身近なところでは、自動車のボディやスマートフォンの部品の製造などに活用されています。具体的にどれくらいの需要があるのでしょうか。
日本の金型生産額
一般社団法人日本金型工業会が工業統計と機械統計などを参考にまとめた資料によると、日本の金型生産額は以下のように推移しています。
|
工業統計(百万円) |
機械統計(百万円) |
2009年 |
1,159,035 |
315,921 |
2010年 |
1,087,388 |
314,851 |
2011年 |
1,162,867 |
315,480 |
2012年 |
1,250,599 |
335,052 |
2013年 |
1,257,499 |
332,960 |
2014年 |
1,342,439 |
353,794 |
2015年 |
1,376,759 |
382,100 |
2016年 |
1,440,944 |
397,808 |
2017年 |
1,525,782 |
420,529 |
2018年 |
1,475,268 |
400,570 |
2019年 |
1,360,230 |
398,765 |
2020年 |
1,222,106(推定) |
358,389 |
※工業統計は全事業所を対象。機械統計は2013年まで従業員20名以上の事業所、2014年以降は従業員30名以上の事業所を対象。
2019年における生産額は1兆3602億円です。2008年9月に起きたリーマンショックで生産額は下落しましたが2010年以降回復しています。
生産額でみる業界別の需要
生産額がわかったところで気になるのが、金型を活用している業界です。具体的に、どのような業界で活用されているのでしょうか。
一般社団法人日本金型工業会が発表いている資料によると、生産額の割合が最も高いのは自動車用です。全体の73.7%を占めています。次に多いのが、その他の5.3%です。生産額の割合は以下のようになっています。
業界 |
生産額の割合 |
自動車用 |
73.7% |
その他 |
5.3% |
電機(家電・一般用) |
4.1% |
玩具・日用・雑貨 |
3.8% |
産業機械用 |
3.4% |
医療用 |
2.4% |
事務機器用 |
2.3% |
精密機器用 |
2.0% |
通信機器用 |
1.6% |
二輪自動車用 |
1.5% |
金型の需要は自動車用が中心といえるでしょう。自動車用に比べると需要はそれほどないものの、電機や玩具・日用・雑貨、産業機械用など、幅広い業種で活用されていることもわかります。
金型生産の中心は愛知県
経済産業省が発表している工業統計調査(品目別統計表)によると、2019年におけるプレス用金型、鍛造用金型、鋳造用金型(ダイカスト用を含む)、プラスチック用金型、ゴム・ガラス用金型、その他の金属用金型、同部分品・附属品などの合計生産額が最も多い都道府県は愛知県です。以降、神奈川県、静岡県、大阪府、岐阜県が続きます。愛知県・神奈川県・静岡県・岐阜県はプレス用金型、大阪府はプラスチック用金型の割合が高くなっています。
金型加工の一般的な流れ
金型は金属で製造した型枠です。具体的な作り方はケースで異なりますが、基本的には以下の流れで進みます。
【金型加工の流れ】
- 見積もりの作成
- 金型の設計
- 金型加工
- 仕上げ加工
- 動作確認
具体的に、どのような流れで製造するのでしょうか。一般的な製造の流れを紹介します。
見積もりの作成
金型の製造は、打ち合わせと見積もりの作成から始まります。見積もりは、打ち合わせ時に顧客から提出された仕様書や図面、3Dデータをもとに作成することが一般的です。また、打ち合わせでは、顧客が抱えている問題点などのヒアリングも行われます。見積書の提出と併せて、改善策の提案などを行う業者が多いでしょう。打ち合わせの段階で、製品の用途や金型製作の目的などを説明できると見積もりをスムーズに作成できるとともに具体的な改善策などの提案を受けやすくなります。余計なコストをかけないため、打ち合わせまでに大まかな用途や要望を整理しておくことが重要です。
金型の設計
顧客から提出を受けた仕様書や図面、3Dデータなどをもとに金型の設計図を制作します。品質・生産性・コストパフォーマンスを高めるため、この段階でも顧客との打ち合わせは欠かせません。打ち合わせでは、金型の構造や型割などを決定します。設計図が完成したら加工に必要なプログラミングを行います。設計図とプログラミングが完成したら金型を製造します。
金型の基本となる形を作る
金型を製造するため最初に行われるのが荒加工です。前加工と呼ばれることもあります。荒加工は、金属の塊に大きな穴を開ける、切り込みを入れるなどにより歪みを取り除く作業です。併せて、荒取りも行われます。荒取りは、金属の不要な部分を削って仕上げ加工時の負荷を軽くする作業です。具体的には、仕上げ寸法よりもやや大きく金属を削る、仕上げ寸法よりもやや小さく穴を開けるなどの作業を指します。荒取り後は、熱処理とマシニング加工を行います。通常、熱処理は機械加工後に行いますが、形状がわずかに変化する恐れがあるため精密さを要求される金型製造ではこの段階で行うことが一般的です。マシニング加工は、工作機械(マシニングセンタ)で金型の大枠を削り出す作業を指します。単純な加工はもちろん複雑な加工まで対応可能です。
金型の細部を加工する
複雑な加工まで対応できるマシニングセンタですが、すべての加工を行えるわけではありません。マシニング加工後は、マシニングセンタでは対応できない加工を行っていきます。具体的には、放電加工・ワイヤカットなどを行います。放電加工は高電圧放電を行える放電加工機を用いてエッジ部やネジ部を加工する作業、ワイヤカットはワイヤーと電気エネルギーを用いてエジェクターピン穴、コアピン穴などを加工する作業です。これらの作業などを通して金型の細部を加工します。
金型の仕上げの加工を行う
以上の作業で金型の形状が完成したら仕上げの加工を行います。代表的な加工といえるのが磨き加工です。磨き加工は、ダイヤモンドペーストやセラミック砥石などを使って滑らかな表面を実現する作業といえるでしょう。金型の磨き作業は、基本的に顕微鏡を用いて手作業で行われます。非常に高度な技術力を要求される作業です。磨き作業が完了したら、部品を揃えて金型を組み立てます。複雑な金型の場合、組み立ても簡単な作業ではありません。
成形後の動作の確認
組立後に行われるのが金型の動作確認です。具体的には、各部位が設計通りに動作することや設計通りに部品を成型できることなどを確かめます。動作確認で問題がなければ金型は完成です。
金型の種類
金型は使用する素材により以下の種類などに分類されます。
【金型の種類】
- プレス用
- プラスチック用
- 鍛造用
- 鋳造用
- ダイカスト用
- ガラス用
- ゴム用
それぞれの特徴は次の通りです。
プレス用
板金素材を用います。プレス用は次の種類などに分類されます。
【プレス用の種類】
- 抜き型
- 曲げ型
- 圧縮型
- 絞り型
自動車はもちろん、家電や日用雑貨など、幅広い製品の製造に活用されている金型の種類です。身近な金型の種類と考えられます。
プラスチック用
プラスチック用は、プラスチック材料を加工するため用いられています。具体的には、以下の種類などに分類されます。
【プラスチック用の種類】
- 射出成型
- 圧縮成形
- 移送成形
- 真空成型
- 吹込成形
プラスチック用は、非常に幅広い分野で用いられています。具体的には、家電・日用雑貨・自動車などが挙げられるでしょう。プレス成型と並び、身近な金型の種類です。
鍛造用
鍛造は、金属を叩いて圧力を加えることで高度を高めつつ設計した形状に仕上げる技術です。この特徴を生かして、自動車の保安部品や自動二輪の部品、建設機械の部品など、高い強度を求められる部品に用いられています。鍛造用には熱間鍛造、冷間鍛造があります。
鋳造用
鋳造は、金属を溶かして型に流し込み加工する技術です。特徴は、加工にかかる時間とコストを抑えやすいこととされています。アルミ合金などを用いて、工業用部品や農業用部品の製造などに用いられています。鋳造用には、シェルフモールド・ロストワックス・圧力鋳造・重力鋳造などの種類があります。
ダイカスト用
ダイカスト用は、アルミ合金や亜鉛合金などを型に流し込んで加工する金型の種類です。大きな枠組みでは鋳造用に分類されます。特徴は、加工時に高圧をかけることで複雑な成形を行えることです。この特徴を生かし、精密機器のほか自動車や家電の部品を作るときなどに用いられています。
ガラス用
ガラス材料を成形するために用いられる金型の種類です。具体的には、ボトルやビン、食器類の製造などに用いられています。ガラス用は、押し型と吹き型に分かれます。吹き型は、空気を吹き込むガラス用に特徴的な加工方法です。
ゴム用
天然ゴムあるいは合成ゴムを成形するために用いられる金型の種類です。自動車部品のほか、工業用部品や日用品(靴など)の製造に用いられています。ゴム用は直圧成形と直圧注入成形などに分かれます。
金型製作は信頼できる業者に依頼
この記事では、金型製作の流れなどを解説しました。完成する製品や部品の精度は金型の品質に左右されます。したがって、金型製作は信頼できる業者に依頼することが重要です。当社は、予見・発見・実現をプロセスに組み込んだモノづくり改革を実現できる金型をご提案しています。射出成型金型・プラスチック用金型をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。
ジェムス・エンヂニアリングでは金型トータルソリューションを提供し、その一環として金型設計支援および製作支援業務を行っております。