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射出成形で扱うプラスチック材料の特性と使い分けのポイント

射出成形で扱うプラスチック材料の特性と使い分けのポイント

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射出成形で扱うプラスチック材料の特性と使い分けのポイント
目次

射出成形で扱うプラスチック素材について解説します。

私たちの生活にプラスチックは欠かせないものですが、プラスチック製品にはどのような素材が使用されているか知っていますか。

ひとことでプラスチックといっても、大きく分けて2種類があります。

それぞれ特性が異なるため、使い分けることで、あらゆる製品を作り出すことが可能です。

素材を加工するのには射出成形という方法が使用されますが、この記事では、射出成形で使うプラスチック素材の種類や特性の違いをまとめています。

プラスチック製品を設計する人はもちろん、プラスチックの製品を扱う人に役立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。

プラスチックとは?

プラスチックとは、「合成樹脂」とも呼ばれる人工合成された樹脂のことです。

語源はギリシャ語の「plastikos(可塑性のある)」ともいわれており、物理的に力を加えることで変形ができ、その形を保持する性質があります。

プラスチックは大きくわけて2種類に分類でき、加熱すると硬くなるものと、加熱すると柔らかくなるものに分かれます。

また、合成樹脂には、ゴムや塗料、接着剤などもありますが、これらはプラスチックからは除外されます。

ここからは、2種類あるプラスチックの違いをみていきましょう。

コストを抑えるなら「熱可塑性プラスチック」

熱可塑性プラスチックとは、加熱することで柔らかくなり、冷やすと固まる性質を持つプラスチックです。

私たちの身の回りのプラスチック製品の多くは、この熱塑性プラスチックでできています。

メリットとしては、成形時間が短いため、低コストで生産が可能という点。

また、一度成形したものであっても熱を加えることで溶かすことができるため、リサイクルに適しています。

デメリットは、機械的強度や耐熱性が低い、耐薬品性に劣るなどです。

強度や耐熱性が必要なら「熱硬化性プラスチック」

熱硬化性プラスチックとは、加熱すると硬くなり、元には戻らない性質を持つプラスチックです。

先ほど紹介した熱可塑性は、熱を加えることで流動性を持ちますが、熱硬化性は、成形前にすでに流動性があるため、機械的強度や耐熱性が必要となる製品に適しています。

たとえば、航空機の構造材料や浴槽、化粧板などです。

機械的強度や耐熱性、加えて耐薬品性に優れているといったメリットの反面、成形時間が長くかかる、溶着ができないといったデメリットがあります。

材料を使い分けるときのポイントは?

プラスチック製品を製造するにあたり、高い機械的強度が必要でない製品の場合は、低コストで加工が可能となる熱可塑性の利用がおすすめです。

逆に、機械的強度や耐熱性を重視する製品であれば、熱硬化性を用いるとよいでしょう。

プラスチック素材には2種類ある

いかがでしたでしょうか?

この記事を読んでいただくことで、射出成形に用いるプラクチック素材についてご理解いただけたと思います。

コスト重視か、耐久性・耐熱性を重視するかで素材を適切に使い分けるようにしましょう。

 

代表的なプラスチック材料

代表的なプラスチック材料として以下のものが挙げられます。

 

【代表的なプラスチック材料】

  1. ABS
  2. PC
  3. PPA
  4. POM
  5. PMMA
  6. PP
  7. PBT

 

それぞれの特徴を紹介します。

 

1.ABS

ABSは、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンと呼ばれる熱可塑性プラスチック材料です。名称のとおり、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンを組み合わせた樹脂となっています。各樹脂の特性を備えているため、さまざまな製品に活用しやすい樹脂と考えられています。

 

特に優れている点は、耐衝撃性(ブタジエンの特徴)に優れていることです。外部から受けた衝撃に対して高い耐久性を示すため、自動車の部品などに多く用いられています。加工性・光沢性(スチレンの特徴)に優れる点も見逃せません。ABSは、さまざまな加工方法に対応しています。これらの特徴から外観を重視する製品、例えば家電製品のリモコンなどにも用いられています。その他には、耐熱性や機械的強度(アクリロニトリルの特徴)などにも優れています。

 

非常に魅力的なプラスチック材料ですが、気をつけたいポイントがあります。

そのポイントとは、射出成形でウェルドラインが発生しやすいという点です。

ウェルドラインは、溶けたプラスチックの合流地点に現れる線状の跡です。また、肉厚部にヒケ(窪み)、ボイド(空洞)が現れやすい点にも注意しなければなりません。

 

2.PC

PCは、ポリカーボネイトと呼ばれる熱可塑性プラスチック材料です。最も大きな特徴は、耐衝撃性が非常に高いことといえるでしょう。プラスチック素材の中で最高の耐衝撃性と考えられています。耐熱性に優れる点もポリカーボネイトの特徴です。具体的には、120~130度程度まで耐えることができます。それ以外にも、ガラスと同レベルの光線透過率を備えている点も見逃せません。したがって、光学部品に使用することもできます。以上の特徴から、防弾ガラス、レンズ、照明、電気電子機器、産業機械カバーなど、幅広い領域で活用されています。

 

もちろん、ポリカーボネイトにも注意したい点はあります。ポリカーボネイトも、肉厚部にヒケ・ボイドが発生することがあります。また、耐薬品性はあまり高くありません。これらが問題になる場合は、ABSやアクリルの利用が検討されます。

 

3.PPA

PPAは、ポリフタルアミドと呼ばれる熱可塑性プラスチック材料です。PPAは、スーパーエンジニアリングプラスチックに分類されます。スーパーエンジニアリングプラスチックに明確な定義はありませんが、金属代替品としての需要が高まったことにより開発された機能性の高いプラスチックと考えられています。具体的には、150度以上の耐熱性と難燃性を兼ね備えていることが一般的です。もちろん、PPAも耐熱性と難燃性に優れています。ただし、PPAにはさまざまな種類があり、種類により特徴は異なります。例えば、耐薬品性に優れるものや耐衝撃性に優れるものなどもあります。PPAは、高温環境下で使用される自動車のエンジンまわりの部品のほか、電子部品、スクリュー、櫛などに用いられています。

 

PPAの注意点は、反りが生じやすいことです。また、吸湿性が高いため、湿度が高い環境下での使用にはあまり向いていません。

 

4.POM

POMは、ポリオキシメチレンと呼ばれる熱可塑性プラスチック材料です。工業用に使用するため機能などを向上させたエンジニアリングプラスチックに分類されます。特徴は、耐摩擦性と耐疲労性に優れていることです。製品を長期間使用したいケースで、適しているプラスチック材料になる可能性があります。また、剛性・強靭性・強度・躍動性などにも優れます。以上の特徴から、オフィス機器の歯車や自動車のパワースライドドアの部品、送風機のブレードなどに用いられています。

 

POMの注意点は、潤滑性が高いため塗装などが難しいことです。製品の外観を美しく仕上げることは難しいかもしれません。また、耐候性が低いため野外などで使用すると変化・変色する恐れがあります。

 

5.PMMA

PMMAは、ポリメチルメタクリレートという熱可塑性プラスチック材料です。一般的には、アクリル樹脂として知られています。PMMAの特徴は、ガラスを凌ぐほどと光透過率が高いことと耐衝撃性に優れていることです。これらの特徴を活かし、身近なところでは水族館の水槽や乗り物の窓などに活用されています。また、光学レンズにも多く用いられています。加工性に優れる点もPMMAの特徴といえるでしょう。PMMAは、日用雑貨や事務用品などにも活用されています。

 

一方で、熱に弱く、傷つきやすい面もあります。また、耐薬品性も劣ります。加工に用いる場合、これらの点には注意が必要です。

 

6.PP

PPは、ポリプロピレンという熱可塑性プラスチック材料です。特徴は、グレードによるものの安価で耐衝撃性や耐摩耗性に優れることです。軽量で加工性に優れる点も見逃せません。以上の特徴を生かして、包装フィルムや買い物袋などに多く用いられています。ただし、低温下では砕けやすい面も持ち合わせています。また、耐候性に劣る点にも注意が必要です。加工においては、肉厚部にボイドが発生しやすいとされています。主な加工方法は、射出成形・押出成形・圧縮成形の3種類です。

 

7.PBT

PBTは、ポリブチレンテレフタレートという熱可塑性プラスチック材料です。ポリエステルのひとつで、エンジニアリングプラスチックに分類されます。特徴は、電気特性・耐熱性・薬品耐性に優れることといえるでしょう。また、加工性の高さも併せもちます。これらの特徴から、電子産業では絶縁体、自動車産業では電装部品として用いられるケースが多くなっています。以上のほかでは、トースターやコーヒーメーカーといった家電にも活用されています。ガラスを混ぜると強度を高められますが、反りが発生しやすくなる点には注意が必要です。また、耐酸性・耐炭化水素性・耐塩基性には優れていません。

 

 

材料の特性を理解して上手く使い分けましょう

この記事では、射出成形で用いるプラスチックについて詳しく解説しました。プラスチック材料は、大きく熱可塑性プラスチック材料、熱硬化性プラスチック材料にわかれます。高い機械的強度を求めない場合は、コスト面で優位性がある熱可塑性プラスチック材料がおすすめです。熱可塑性プラスチック材料には、ABS・PC・PPAなどさまざまな種類があります。それぞれの特徴は異なるため、目的に合わせて選択することが重要です。詳しい情報が必要な場合は、プラスチック加工の専門家に相談するとよいでしょう。

 

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